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小さくつぶやいた声は簡素な部屋に溶けていく。遮光カーテンを閉め切ったから、体も闇にまぎれて、僕はやっと安堵した。
僕はもう長い間、あの強烈な光から逃避していて、同時にとらわれていて、この部屋から殆ど出ていない。どの位の時がたったんだろう。秋が来るのは3回目だったか4回目だったか。
そして時間が経つほど、やっぱり、僕がいなくても世界は平常に動くということを思い知らされている。核爆弾が落っこちるとか、国が混乱を起こすとか、流石にそんなことまでは考えていなかったけど…誰かが、呼びに来てくれる、とか。
…ばっかじゃねぇの。
僕は自嘲気味に笑った。自分が社会的に消える所為で、どこかで誰かが困るんじゃないかと期待していた。僕じゃなくちゃいけない誰かがいるんじゃないか。これだけ待っても誰も来ないのに、まだ期待が捨て切れていなかった。それが滑稽だった。
――ばいばい。ばいばぁい。
ちょっとこもった幼い声が、名残惜しそうに別れを告げるのが外から聞こえる。僕には眩しいから、もう一度窓から覗くなんて野暮なことはしなかった。そう、眩しいから。
あの眩しさの中に、確かに僕はいた筈なのに。
『茜』。
うっかり口にしてしまった名前を、今度は頭の中で呼んでみる。
あいつは僕を、まだ覚えているんだろうか。
陽が完全に沈むまで、僕はじっと、かくれんぼの様に息をひそめていた。
―――――
つぶやき…
茜誰だし(笑) ちょっと長かったかも。